垂直抗力とは
「筆箱を机の上に置くと、机を突き抜けて筆箱が落下する」なんてことは通常起こらない。机の上で静止する。これは、以下のように、垂直抗力が働くからである。垂直抗力が働くことで、重力とつり合って、静止する。
垂直抗力を厳密に定義するとややこしいので省略するが、大雑把なイメージは以下である。
“①地面を押す力の反作用”
“②接触面に垂直方向に働く”
ただ、これだけでは不十分なので、以下の具体例を通しながら、垂直抗力の本質を学んでほしい。
垂直抗力の求め方~よくある勘違いについて~(N=mgではない!)
たとえば、物体(質量1.0 kg)を床に置き、この物体を5.0 Nの力で押す場合を考える。(重力加速度 \(g\) =9.8 m/s2)
垂直抗力の求め方は、以下の2つのステップである。
テキトーに下向きを正にすると、\[9.8 + 5.0 - N =0\\N=14.8\]
よって、15 N・・答え。
よく、\(N=mg\)と勘違いして覚えている人がいるが、それは誤りである。
あくまで、垂直抗力のイメージは、”地面を押す(合計の)力の反作用”である。上から5.0 Nで押せば、その分、物体が地面を押す力が増えるのはイメージしやすいだろう。よって、垂直抗力も増えるのである。
2物体を重ねた場合の垂直抗力
以下のように質量 \(m\) の物体Aと質量 \(M\)の物体Bを重ねて置いた。この時、物体Bに働く垂直抗力について考える。
さきほどのStep1、2に従って、求めていく。
物体が2つある時は、2つそれぞれについてつり合いの式を立てるのが鉄則である。下向きを正にすると、以下のようになる。
物体Aについて:\(mg-N_{A}=0・・①\)
物体Bについて:\(F+Mg-N_{B}=0・・②\)
また、作用反作用の法則より、\(F=N_{A}\) 。よって、②式は、\(N_{A}+Mg-N_{B}=0\) となる。
さらに、①より、\( N_{A}=mg\)であり、これを代入すると、
\(mg+Mg-N_{B}=0\)
よって、\(N_{B}=(M+m)g\)・・答え。
また、別解として、
物体AとBを、1つの質量 \(M+m\) の物体とみなして垂直抗力を計算してもよい。(以下の図参照)
つり合いの式を立てると、\((M+m)g-N_{B}=0\) となり、上記の答えが出る。
例題
解説:
下向きを正にすると、
\(-S+mg-N=0\)
よって、\(N=mg-S\)・・答え
垂直抗力の応用
斜面に置かれた場合の垂直抗力
以下のように、角度θのあらい斜面に置かれた質量 \(M\) に働く垂直抗力を考える。
その際、セクション1で見た垂直抗力のイメージ、”②接触面に垂直”を思い出す。この場合、接触面は斜面であるので、垂直抗力は以下のようになる。
ここでも、今までと同じように2ステップで垂直抗力を求める。
まず、重力の垂直抗力方向の成分は、以下のように\(Mgcosθ\)である(オレンジ)。
※摩擦は、垂直抗力Nとは90°の関係なので、つり合いの式の考慮に入れる必要はない。
よって、つり合いの式は、\(Mgcosθ-N=0\) である。
よって、\(N=Mgcosθ\)・・答え
斜面に置き、さらに力を加えた場合の垂直抗力
さらに、斜面に置いた物体に、以下の方向に大きさ \(F\) の力を加えた場合の、垂直抗力を考える。
こういった少し複雑な場合になっても、今までと同じように考えていけば、必ず分かる。物理では、定義や本質を明確にし理解していれば、どんな問題にも使える。こういった、本質や原理原則を学ぶ勉強をおすすめする。
以下のように、物体に働く力を図示し、力を分解してから、つり合いの式を立てる。(これ以降は摩擦は図示しない)
つり合いの式:\(Fsinθ+Mgcosθ-N=0\)
よって、\(N= Fsinθ+Mgcosθ\)・・答え。
応用例題
解説:
同じく、以下のように力を分解し、つり合いの式を立てる。
\(-Tsinθ-N+Mgcosθ=0\)
よって、\(N=Mgcosθ-Tsinθ\)・・答え
この問題まで完璧にすれば、垂直抗力はばっちりである。