等加速度運動とは
停止した自動車のアクセルを踏むと、車が動きだす。速度メーターが、10、20、30と次第に大きくなっていく。
例えば、アクセルを踏んで1 s後に5 m/s、2 s後に10 m/s、3秒後に15 m/s・・だったとする。つまり、1 sで5 m/s増加している。
このとき、加速度は常に
$$\frac{5m/s}{1s} = 5m/s^2$$
で一定である。
このような、加速度が常に一定の運動を、等加速度運動という。
逆に、20 m/s で走っている車のブレーキを踏み、1 s後に15 m/s、2秒後に10 m/s、3秒後に5 m/s のようになったとする。つまり、1 sで5 m/s減少している。
これも、減速してはいるが、加速度は常に、
$$-\frac{5m/s}{1s} = -5m/s^2$$
で一定である。
これも、等加速度運動である。
つぎは、問題を解くうえで非常に重要な公式について見ていく。
重要な3公式
公式の紹介
等加速度運動では、以下の3つの公式を非常によく使う。
等加速度運動の3公式∶
(a) $$v=v{\tiny 0}+at$$ (v:運動後の速度 、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(b) $$x=v{\tiny 0}t + \frac{1}{2}at^2$$ (x:変位、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(c) $$v^2-v{\tiny 0}^2=2ax$$ (v:運動後の速度、v0:初速度、a:加速度、x:変位)
v 、aなどの記号のイメージが、以下の図である。(〇は物体、太矢印は速度を表している)
公式(a)の意味
(a)の公式の意味(≒導出)について、簡単に触れる。
例えば、初速度
$$v{\tiny 0} = 10m/s$$
で動いていた自動車が、ブレーキを踏み、一定の加速度
$$a=-2.0 m/s$$
で減速し始めたとする。
このとき、
$$t=4.0 s$$
後の速度 v はどうなるかを考える。(この状況を簡単にまとめたものが以下の図である。)
ブレーキを踏んだことにより、速度が変化するので、まず速度変化を求める。
加速度(m/s2)とは、1.0 sあたりの速度変化である。
つまり、加速度 a=-2.0 m/s2とは、1.0 sで-2.0 m/s変化するということ。
よって、2.0 sでは、-2.0 m/s2×2.0 s(=-4.0 m/s) 変化し、3.0 sでは、-2.0 m/s2×3.0 s(=-6.0 m/s) 変化するということである。
t=4.0 s運動したので、速度の変化は、
$$-2.0×4.0 (=-8.0 m/s)$$
である。
つまり、運動後の速度 vは、初速度v0=10 m/sから (-2.0)×4.0 m/sだけ変化した値。
よって、式は
$$v=10+(-2.0)×4.0$$
になる。
これを、数字ではなく、記号で表すと、以下ように公式(a)になる。
$$v=v{\tiny 0}+at$$
(※ 10 → v0 -2.0 → a 4. → t )
公式(b)の導出[※発展]
公式(b)は、個人的には丸々覚えてしまってもいい気もする。一応、発展的内容(数学の微分積分を学習した人向け)にはなるが、公式(b)の意味(≒導出)についても述べる。よく分からない場合は、とばしてもよい。
まず、速度 v と変位 x には、以下の関係がある。これは、ある種定義のようなものである。
つまり、v=v0+at をtで積分すると、
$$\int_{}{}{vdt} = \int_{}{}{(v{\tiny 0} + at)}$$
$$x=v{\tiny 0}t + at^2$$
のように、公式(b)が導かれる。
公式(c)の導出
公式(c)は、公式(a)を式変形し、
$$t=\frac{(v-v{\tiny 0})}{a}$$
問題の解き方のポイント(例題演習)
以下の例題を解きながら、ポイント(公式の使い方)を丁寧に紹介する。(※慣れている人からすると、やや丁寧すぎるかもしれない。)
例題
例題:東向きに4.0 m/sで進んでいる物体が、西向きの加速度2.0 m/s2で3.0秒間運動したときの物体の変位[m]を求めよ。東向きを正とする。
解説&ポイント紹介
まず、
step① : 3公式を書く
(a) $$v=v{\tiny 0}+at$$ (v:運動後の速度 、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(b) $$x=v{\tiny 0}t + \frac{1}{2}at^2$$ (x:変位、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(c) $$v^2-v{\tiny 0}^2=2ax$$ (v:運動後の速度、v0:初速度、a:加速度、x:変位)
step② : 問題文を読み、求めるものを把握し、公式中の記号に下線を引く。下線のない公式は無視する。
この場合、求めるものは変位であり、記号は x。
3公式(a)~(c)中のxに下線を引く。
すると、(a)は下線[x]が登場しないので無視できる。
step③:問題文を読み、分かっているものを把握し、公式中の記号に〇を付ける
この場合、初速度v0 (=東向きに4.0 m/s)、加速度a (=西向き2.0 m/s2)、時間t (=3.0 s)が分かっている。
よって、公式(b)(c)中の対応する記号に〇をする。
※下の図では○で囲った部分は、青色部分。
step②③を踏まえると、以下のようになる。
(a) $$v=v{\tiny 0}+at$$ (v:運動後の速度 、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(b) $$x=\color{blue}{v{\tiny 0}t} + \frac{1}{2}\color{blue}{at^2}$$ (x:変位、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(c) $$v^2-\color{blue}{v{\tiny 0}^2}=2\color{blue}{a}x$$ (v:運動後の速度、v0:初速度、a:加速度、x:変位)
step④ : 答えが求められる公式を選び、数字を代入して計算する
下線以外が〇の公式(b)を使えばよいことが分かる。よって、(b)を使い、計算していく。
この場合、東向きを正としているので、初速度v0=+4.0 m/s 、加速度a=-2.0 m/s2 、
t=3.0 s を公式(b)へ代入。
$$x=4.0×3.0 +\frac{1}{2}(-2.0)(3.0)^2=3.0 m$$
となる。
以上がポイントである。慣れてくると、step②③は飛ばして、スムーズに解けるようになるはずである。
それでは、少しレベルをあげて、練習問題を取り扱う。
練習問題
問題
練習:初速度0 m/s 、加速度 g m/s2 で物体が運動し始めた。加速度は常に一定とする。このとき、物体の変位が y m に達するには、何秒かかるか?ただし、yは0以上である。
3. 問題の解き方のポイント step①~④の通りにやってみよう。
解説
step①:3公式(a)~(c)を書く
(a) $$v=v{\tiny 0}+at$$ (v:運動後の速度 、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(b) $$x=v{\tiny 0}t + \frac{1}{2}at^2$$ (x:変位、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(c) $$v^2-v{\tiny 0}^2=2ax$$ (v:運動後の速度、v0:初速度、a:加速度、x:変位)
step②:問題文を読み、求めるものを把握し、公式中の記号に下線を引く。下線のない公式は無視する
この場合は、求めるものは時間であり、記号は t。3公式(a)~(c)中のtに下線を引く。
すると、(c)は下線[t]が登場しないので無視。
step③:問題文を読み、分かっているものを把握し、公式の記号に〇を付ける
この場合、初速度 v0 (=0 m/s)、加速度 a (= g m/s2)、変位 x (=y m)が分かっている。よって、公式(a)(b)中の対応する記号に〇をする。
※下の図では○で囲った部分は、青色部分。
step②③を踏まえると、以下のようになる。
(b) $$\color{blue}{x}=\color{blue}{v{\tiny 0}}t + \frac{1}{2}\color{blue}{a}t^2$$ (x:変位、v0:初速度、a:加速度、t:時間)
(c) $$v^2-v{\tiny 0}^2=2ax$$ (v:運動後の速度、v0:初速度、a:加速度、x:変位)
step④:答えが求められる公式を選び、代入して計算する。
下線以外が〇の公式(b)を使えばよいことが分かる。
初速度 v0=0 m/s 、加速度 a=g m/s2 、変位 x=y mを公式(b)へ代入。
$$y=0×t +\frac{1}{2} gt^2$$
$$y= \frac{1}{2} gt^2$$
$$t^2=2\frac{y}{g}$$
$$t=\sqrt{(\frac{2y}{g})} (t>0より)$$
$$\sqrt{(2y/g)} 秒・・・答え $$
問題集の問題なども、慣れるまでは丁寧にstep①~④にそってやることをおすすめする。ある程度数をこなせば、step②③をしなくても、できるようになるはず。
ここまでで、等加速度運動の基礎基本は終了。以下は、他分野(運動方程式、落下&投げ上げ)とのつながりの話。他分野を勉強したうえで読むと、より理解が深まる。
運動方程式との関係(※発展)
さきほど見てきた例題などでは、加速度が与えられていた。しかし応用問題では、加速度aを運動方程式 F=ma [ F : 合力、m : 質量]で求めてから、3公式を適用していく問題もある。
たとえば、以下のような問題である。
質量M kg の物体を、あらい平面上で、初速度v0 m/sで運動させた。このとき、運動開始T s後の物体の変位はいくらか?このとき、物体に働く摩擦力はS [N](定数)とし、T s経過しても物体は動いているものとする。
この場合、先ほどのstep①~④通りに行おうとすると、step③終了時点で、どの公式でも求まらないことが発覚する。そもそも、この運動が加速度一定なのか不明である。つまり、等加速度運動の公式を適用できるのか不明ということ。ここも確かめないといけない。
ということで、まずは、運動方程式を立て、加速度を求める。
この場合、物体の進行方向(右)を正とし、物体の加速度をa とすると、運動方程式は、
$$-S=Ma$$
のようになる。
加速度aを求めると、
$$a=-S/M$$
となる。
SもMも定数であるので、加速度aは一定。➡等加速度運動である!
よって、3公式を適用できる。
あとは、step①~④にそって行うと(詳細は割愛)、公式(b)により求められ、
$$x=v{\tiny 0}T-\frac{S}{2M}T^2・・答え$$
となる。
受験問題でも、運動方程式で加速度を求めてから公式を使う問題はよく出る。
落下&投げ上げ運動との関係(※発展)
この先、自由落下運動、鉛直投げ下げ運動、鉛直投げ上げ運動の公式が出てくる。それぞれ3つずつあるので、計9個出てくる。しかし、今回の3公式を理解していれば、ほとんど覚える必要が無い。(それぞれの詳細は、落下や投げ上げの単元で学んでほしい。)
自由落下
自由落下とは、初速度v0=0 m/sで、そおっと物体を鉛直方向に落下させる運動である。落下中は重力がはたらくため、物体の速度は変化していく。ものを落としたときに、速度が大きくなるのは、日常生活でもイメージしやすいだろう。
←自由落下のイメージ図。
速度が変化するという事は、加速度が働いている。このとき働く加速度は、重力加速度gと言われる。地球では、およそ g=9.8 である。
空気抵抗を無視すると、落下中の加速度は常にgである。(※これも、運動方程式を立てると導ける。質量m kgの物体に働く重力はmg Nより、落下方向を正にすると、運動方程式は、ma=mg 。➡ a=g)
また、物体の変位xは、落下方向が縦であるので、分かりやすくyとする。(※数学のx-y平面を思い出すと、yは縦方向である。ただ、xとしておいても何ら支障はない。)
よって、3公式(a)~(c)に、v0=0、a=g、x=y を代入すると、(落下方向を正)
(b’) $$y=\frac{1}{2}gt^2$$
(c’) $$v^2=2gy$$
鉛直投げ下げ
鉛直投げ下げは、自由落下の初速度が0ではない場合である。
つまり、3公式(a)~(c)に、a=g、x=y を代入すると、(落下方向を正)
(b”) $$y=v{\tiny 0}t+\frac{1}{2}gt^2$$
(c”) $$v^2-v{\tiny 0}^2=2gy$$
鉛直投げ上げ
鉛直投げ上げは、以下の図ように初速度v0で鉛直上向きに投げ上げることである。
この場合、さきほどと違い、上向きを正として考えている。つまり、下向きに働く重力は、符号で言うと”負”になる。よって、加速度はa=-g となる。
つまり、3公式(a)~(c)に、a=-g、x=y を代入すると、(上方向を正)
(b””) $$y={\tiny 0}t-\frac{1}{2}gt^2$$
(c””) $$v^2-v{\tiny 0}^2=-2gy$$
以上が等加速度運動の重要事項である。等加速度運動は、運動方程式や投げ上げなどの単元とも関連している。是非、じっくり基礎から習得してほしい。