イオン化エネルギー徹底解説!周期表での法則も解説

イオン化エネルギー徹底解説!周期表での法則も解説

1. イオン化エネルギーとは(イメージ図付き)

原子を陽イオンにする際、原子から電子を取る必要がある。(以下の図)

このとき、”マイナス”電荷の電子は、”プラス”の原子核に引き付けられている(プラスとマイナスで引き合う引力)。

引き付けられている電子を取り除くには、ある程度のエネルギーが必要。このエネルギーのことを、イオン化エネルギーという。(※厳密には、正しくない。とりあえずこのイメージでOK。厳密な定義は、1-1へ)

つまり、イオン化エネルギーが大きい = 電子を取り除くのに大きなエネルギーが必要 = 陽イオンになりにくい。
(言い換えると、イオン化エネルギーが小さい = 電子を取り除くのに必要なエネルギーは小さい = 陽イオンになりやすい。)

取り除く電子の数が1つの場合に必要なエネルギーは、「第1イオン化エネルギー」という。(多くの場合、「第1」は省略される)

そして、1つの電子が取り除かれた陽イオンから、さらにもう1つの電子を取り除くためのエネルギーを、「第2イオン化エネルギー」という。

以下では、第1イオン化エネルギーと第2イオン化エネルギーについて補足をする。

1-1. 高校で学習するのは第1イオン化エネルギー

高校の教科書で学習するのは、第1イオン化エネルギーである。多くの場合、「第1」は省略されるが、教科書や参考書をよく見ると、( )付きなどで載っている場合もある。

また、第1イオン化エネルギーの厳密な定義は、以下である。(高校の範囲では、この厳密な定義は必要ないかもしれない。)

「気体状態の」原子1つから、(最も取り除きやすい)電子1つを取り去るのに必要なエネルギー

「気体状態」に注目して欲しい。

たとえば、鉄原子のイオン化エネルギーを考える。このとき、鉄と言われると、「固体」を想像しがちである。しかし、そうではない。鉄を高温に加熱するなどして、「気体」にして、その「気体状態」の鉄原子から電子1つを取り除く場合が正しい。

※(最も取り除きやすい)は、気にする必要はないが、念のため入れておいた。

1-2. 第2イオン化エネルギーとは(発展編)

まず、第2イオン化エネルギーは、高校教科書では出てこないので、とばしたい人はとばしてよい。

第2イオン化エネルギーの厳密な定義は、以下である。

電子1つを取り除いた「気体状態」の陽イオンから、さらに1つの電子を取り除くために必要なエネルギー

もしかしたら、難関大学などで扱われる可能性もあるので、少し覚えておいてもいいかもしれない。

2. イオンエネルギーの大小と周期表の関係

2-1. 同族元素内でのイオン化エネルギー

同族元素(周期表の縦)内で、イオン化エネルギーの大小には傾向がある。

たとえば、2族元素の(Be、Mg、Ca、Sr、Ba)について見る。イオン化エネルギーの大小は、以下のようになる。

Be>Mg>Ca>Sr>Baの順にイオン化エネルギーが大きい。言い換えると、
Beが一番陽イオンになりにくく、Baが一番陽イオンになりやすい。

このように、

同族元素内では、周期表で上にいくほどイオン化エネルギーは大きくなる。これは、他の同族元素内でも一緒である。

このような規則性の背景は、「原子半径の大きさ」である。具体的には、以下のようになる。

同族元素内で上にいくほど、原子半径は小さい
=電子(“マイナス”)と原子核(”プラス”)の距離が小さい
=電子に働く電気的な引力が大きい
=電子を取り除くのに大きなエネルギーが必要
=イオン化エネルギーが大きい。

2-2. 同周期元素内でのイオン化エネルギー

今度は、同周期(周期表の横)内でのイオン化エネルギーについて見ていく。結論から言うと、2-1の同族元素内と違って、きれいに大小関係があるわけではない。

ただし、ある程度の傾向はある。それは、

同周期元素では、右側の元素の方が、イオン化エネルギーが大きい。
(※もう一度言うが、これは厳密でない。実際、2周期で見ると、NよりOが右だが、イオン化エネルギーはNの方が大きい。理由は、高校の範囲をかなり超えてしまうので割愛する。)

なぜ、右側の方がイオン化エネルギーが大きいのか。主な理由の1つ目は、以下である。

同周期内で、右に行くほど、陽子の数が増える
=原子核の”プラス”の量が増える
=原子核が電子を引く力が大きくなる
=電子を取り除くのに大きなエネルギーが必要
=イオン化エネルギーが大きい

そして、2つ目は、忘れてはいけない最重要事項である。それは、

「希(貴)ガス原子」が一番イオン化エネルギーが大きい

ことである。

これは、

「希(貴)ガスは、(イオンではなく)原子の状態が非常に安定した電子配置」だからである。
(=非常に安定した状態から、電子を取り除くには、大きなエネルギーが必要)

 

また、第1族原子がイオン化エネルギーが小さい理由も、これに関係している。

「第1族原子は、最外殻電子が1つであり、この1つを取り除けば、非常に安定している希(貴)ガス原子と同じ電子配置になる」からである。

自然界では、「安定な方へ行きやすい」という原理がある。そのため、”1つ電子を取れば安定”である場合、電子を取り除くエネルギー(=イオン化エネルギー)は小さくなる。

2-3. まとめ(周期表とイオン化エネルギー)

以上のイオン化エネルギーの大小をまとめると、以下のようになる。

周期表の右上ほど、イオン化エネルギーが大きい。とイメージを持っておくとよい。

3. 例題演習

例題:以下の文章が、正しければ〇、間違っていれば×を書きなさい。
(1) イオン化エネルギーが大きい原子ほど、陽イオンになりやすい。
(2) 第2周期で一番イオン化エネルギーが大きいのは、フッ素である。
(3) 第1族で、イオン化エネルギーが最も大きいのは水素である。

解説:
(1) ×
イオン化エネルギーとは、原子から電子を取り除き陽イオンにするために必要なエネルギー。よって、イオン化エネルギーが大=電子を取り除きにくい=陽イオンになりにくい。(詳しくは➡セクション1へ)

(2) ×
第2周期で一番イオン化エネルギーが大きいのは、Neである。一般に、同じ周期で見れば、希(貴)ガス元素がイオン化エネルギーが一番大きい。(詳しくは➡セクション2-2へ)

(3) 〇
同族元素内では、周期表の上に行くほどイオン化エネルギーが大きい。(詳しくは➡セクション2-1へ)

4. イオン化エネルギーとイオン化傾向の違い

高校の化学では、イオン化エネルギーに加え、イオン化傾向を学ぶ。ざっくり、
「イオン化傾向が大きい=陽イオンになりやすい」と覚えている人も多いのではないだろうか。

イオン化エネルギーと似たような話であるが、どう違うのか、説明する。

まず、イオン化エネルギーの厳密な定義を思い出そう。

(第1)イオン化エネルギーとは、
「気体状態の原子1つから、(最も取り除きやすい)電子1つを取り去るのに必要なエネルギー」である。

一方、

イオン化傾向は、
「金属の単体が、水溶液中で電子を放出して、陽イオンになろうとする」ことを表す。

細かな違うポイントは何個かあるが、

覚えておくべき重要な違いは、「気体状態」か「水溶液中」かである。

この理論的背景は難しいので割愛する。しかし、高校の範囲でも理解出来ないことはない。難関大でも、誘導や補助付きでたまに出題されることがある。

興味がある方は、大学の無機化学の教科書(ex:シュライバー・アトキンス無機化学)を見てみると良い。

違うとはいえ、イオン化エネルギーとイオン化傾向はある程度は対応している。つまり、
「イオン化エネルギーが小さい(=陽イオンになりやすい)金属ほど、イオン化傾向が大きい」というある程度の関係はある。

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