1. 無限等比級数とは?
以下のように、等比数列(初項 \(a=3 \)、公比 \(r=2 \))を、無限に足したものを無限等比級数という。
\[3+3\cdot2+3\cdot2^2+3\cdot2^3+\cdot \cdot +3\cdot2^{100}+\cdot \cdot \cdot\]
また、Σを使って、以下のように表すこともできる。
\[\sum_{k=1}^{∞}3\cdot2^{k-1}\]
一般に、初項 \(a\)、公比 \(r\) とすると、無限等比級数は以下のように表される。
\[\sum_{k=1}^{∞}a\cdot r^{k-1}\]
2. 無限等比級数の収束発散
2-1. 収束発散条件
無限等比級数が収束するか発散するか、判定する問題がよくでる。
参考書や教科書などでは、以下のように収束発散条件がまとめられている。
無限等比級数\(\sum_{k=1}^{∞}(a\cdot r^{k-1})\)について、
[1]-1 : \(|r|≧1\)のとき発散する。
[1]-2 :\(|r|<1\)のとき収束し、その和は\(\frac{a}{1-r}\)。
[2] \(a=0\)のとき、収束し、その和は0。
それぞれについて、具体的に例を出しながら補足解説をする。
2-1-1 . \(|r|>1\)の場合
まず[1]-1の \(r>1\) ついて。具体的に、以下の無限等比級数を考える。(初項 \(a=3 \)、公比 \(r=2(>1)\))
\[3+3\cdot2+3\cdot2^2+3\cdot2^3+\cdot \cdot +3\cdot2^{100}+\cdot \cdot \cdot\]
無限等比級数を考える際の基本は、以下の2つ。
★2)次に、\(\lim_{n \to ∞} S_{n}\)(※イメージ:初項から∞項までの和、つまり、無限等比級数に対応)が収束するか発散するか、確かめる
ということで、
\[S_{n}=3+3\cdot2+3\cdot2^2+\cdot\cdot+3\cdot2^{n-1}\]
\[=\frac{3(1-2^{n})}{1-2}\]
\[\lim_{n \to ∞} S_{n}=\lim_{n \to ∞}\frac{3(1-2^{n})}{1-2}=\lim_{n \to ∞}(3\cdot2^n-3)\]
\(\lim_{n \to ∞}2^n=∞\)より、\(\lim_{n \to ∞} S_{n}\)は発散する。
よって、無限等比級数は発散する。
2-1-2 . \( |r|=1\)の場合
まず、[1]-1の \(r=1\) の場合。以下の無限等比級数を考える。
\[3+3+3+\cdot\cdot\cdot\cdot\]
さきほどの★1、★2の通りに考える。
\[S_{n}=3+3+\cdot\cdot\cdot+3=3\cdot n \]
\[\lim_{n \to ∞} S_{n}=\lim_{n \to ∞}3n=∞\]
よって、無限等比級数は発散する。
次に、\(r=-1\) の以下の無限等比級数を考える。
\[3-3+3-3+\cdot\cdot\cdot\cdot\]
これは、
\(S_{1}=3\)
\(S_{2}=3-3=0\)
\(S_{3}=3-3+3=3\)
\(S_{4}=3-3+3-3=0\)
(以下略)
のように、和が3と0の交互になる。
そのため、\(\lim_{n \to ∞} S_{n}\)は1つの値にならないので、収束しない。
収束しない場合は発散すると表現するため、無限等比級数は発散する。
ちなみに、このような「収束」、「正の無限大に発散」、「負の無限大に発散」のいずれにも当てはまらないものを「振動する」といい、「振動」も発散の仲間となる。
2-1-3. \(|r|<1\)の場合
次に[1]-2の中の \(r<1\) を考える。
たとえば、以下の無限等比級数を考える。(初項 \(a=3 \)、公比 \(r=\frac{1}{2}(<1)\))
\[3+3\cdot\frac{1}{2}+3\cdot(\frac{1}{2})^2+3\cdot(\frac{1}{2})^3+\cdot \cdot \cdot\]
同じく★1、★2のように考える。
\[S_{n}=3+3\cdot\frac{1}{2}+3\cdot(\frac{1}{2})^2+\cdot\cdot+3\cdot(\frac{1}{2})^{n-1}\]
\[=\frac{3(1-(\frac{1}{2})^{n})}{1-(\frac{1}{2})}\]
★2 :
\[\lim_{n \to ∞} S_{n}=\lim_{n \to ∞}\frac{3(1-(\frac{1}{2})^{n})}{1-(\frac{1}{2})}\]
(\(\lim_{n \to ∞}(\frac{1}{2})^n=0\)より)
\[=\frac{3}{1-(\frac{1}{2})}\]
よって、無限等比級数は収束する。(収束値は、\(\frac{3}{1-(\frac{1}{2})}=\frac{a}{1-r}\))
2-1-4. \(a=0\) の場合
最後に、\(a=0\) のとき、無限等比級数は、
\[0+0+0+\cdot\cdot\cdot\]
となり、当然0に収束する。
ということで、再度無限等比級数の収束発散条件を書いておくと、
[1]-1 : \(|r|≧1\)のとき発散する。
[1]-2 :\(|r|<1\)のとき収束し、その和は\(\frac{a}{1-r}\)。
[2] \(a=0\)のとき、収束し、その和は0。
以上の2-1-2~2-1-4の具体例とセットにして理解しておくと、覚えやすいだろう。
2-2. 例題演習
\[\ (2-\sqrt{2})+(2-\sqrt{2})^2+(2-\sqrt{2})^3+\cdot\cdot\cdot\]
解説:
公比は\(r=2-\sqrt{2}\) である。
よって、\(|r|=2-\sqrt{2}\) が1より大きいか小さいか調べる。(\(|r|>1\)を満たせば発散で、
\(|r|<1\)を満たせば収束。)
\(1<\sqrt{2}<2\) より、\(0<2-\sqrt{2}<1\)。よって、\(|r|<1\)を満たすので、収束する。
2-3. 応用問題演習
\[x+x(-x^2+5)+x(-x^2+5)^2+\cdot\cdot\cdot\]
解説:
初項 \(x\) で公比 \( r=-x^2+5 \) の無限等比級数である。
まず、初項 \(x\) が0なら、収束する。・・① ※これも必ず記述をしておく必要がある。
次は、初項 \(x≠0\) のとき。
公比 \(r=-x^2+5 \)が \(|r|<1\) を満たせば、収束する。
よって、
\(|-x^2+5|<1\\-1<-x^2+5<1\\-1<x^2-5<1\)\(まず左側を計算する。\\-1<x^2-5\\0<x^2-4\\x<-2、x>2\cdot\cdot(A)\)
\(次に右側を計算する。\\x^2-5<1\\x^2-6<0\\-\sqrt{6}<x<\sqrt{6}\cdot\cdot(B)\)
(A)と(B)の共通範囲を求めて、\(-\sqrt{6}<x<-2、2<x<\sqrt{6}\)・・②
①と②の場合を合わせて、答えは、\(x=0、-\sqrt{6}<x<-2、2<x<\sqrt{6}\)
3. 無限等比級数の応用
3-1. 例題演習(図形との関連)
解説:
まず、\(P_{7}\)くらいまで具体的に座標を調べる。
\(P_{1}\left(0\ ,\ 1\right)\)、
\(P_{2}\left(\frac{1}{3}\ ,\ 1\right)\)、
\(P_{3}\left(\frac{1}{3}\ ,\ 1+(\frac{1}{3^2})\right)=\left(\frac{1}{3}\ ,\ 1+(\frac{1}{9})\right)\)
\(P_{4}\left(\frac{1}{3}+(\frac{1}{3^3})\ ,\ 1+\frac{1}{9}\right)=\left(\frac{1}{3}+(\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9})\ ,\ 1+\frac{1}{9}\right)\)
\(P_{5}\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9}\ ,\ 1+\frac{1}{9}+(\frac{1}{3^4})\right)\)
\(=\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9}\ ,\ 1+\frac{1}{9}+(\frac{1}{9^2})\right)\)
\(P_{6}\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9}+(\frac{1}{3^5})\ ,\ 1+\frac{1}{9}+\frac{1}{9^2}\right)\)
\(=\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9}+(\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9^2})\ ,\ 1+\frac{1}{9}+\frac{1}{9^2}\right)\)
\(P_{7}\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9^2}\ ,\ 1+\frac{1}{9}+\frac{1}{9^2}+(\frac{1}{3^6})\right)\)
\(=\left(\frac{1}{3}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9}+\frac{1}{3}\cdot\frac{1}{9^2}\ ,\ 1+\frac{1}{9}+\frac{1}{9^2}+(\frac{1}{9^3})\right)\)
よって、
\[P_{2n}=\left(\sum_{k=1}^{n} \frac{1}{3}\cdot(\frac{1}{9})^{k-1}\ ,\ \sum_{k=1}^{n} (\frac{1}{9})^{k-1}\right)\\[8mm]P_{2n+1}=\left(\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{3}\cdot(\frac{1}{9})^{k-1}\ ,\ \sum_{k=1}^{n+1} (\frac{1}{9})^{k-1}\right)\]
よって、
\[\lim_{n \to ∞} P_{2n}=\left(\frac{\frac{1}{3}}{1-\frac{1}{9}}\ ,\ \frac{1}{1-\frac{1}{9}}\right)=\left(\frac{3}{8}\ ,\ \frac{9}{8}\right)\]
\[\lim_{n \to ∞} P_{2n+1}=\left(\frac{\frac{1}{3}}{1-\frac{1}{9}}\ ,\ \frac{1}{1-\frac{1}{9}}\right)=\left(\frac{3}{8}\ ,\ \frac{9}{8}\right)\]
以上より、答えは、\(\left(\frac{3}{8}\ ,\ \frac{9}{8}\right)\)
3-2. “カッコ”をつけるつけないの話
次の問題を考える。
例題:次の無限級数の収束、発散を調べ、収束すればその和を求めよ。
\((1)(-\frac{3}{2}+\frac{3}{2})+(-\frac{4}{3}+\frac{4}{3})+(-\frac{5}{4}+\frac{5}{4})\cdot\cdot\cdot\) \((2) -\frac{3}{2}+\frac{3}{2}-\frac{4}{3}+\frac{4}{3}-\frac{5}{4}+\frac{5}{4}\cdot\cdot\cdot\)(1)と(2)の違いは、( )があるかないかである。
●(1)の場合は、
第1項が (\(-\frac{3}{2}+\frac{3}{2}\)) 、第2項が (\(-\frac{4}{3}+\frac{4}{3}\))、・・第 \(n\) 項が (\(-\frac{n+2}{n+1}+\frac{n+2}{n+1}\))であるとして、以下のように部分和を考えてよい。
\[S_{n}=(-\frac{3}{2}+\frac{3}{2})+(-\frac{4}{3}+\frac{4}{3})+\cdot\cdot\cdot+(-\frac{n+2}{n+1}+\frac{n+2}{n+1})\]
これはもちろん0になるので、無限等比級数は収束する(収束値は0)。
●一方、(2)の場合は、
(1)のように()を付けたくなってしまうが、勝手に()を付けてはダメである。
()が無い場合は、\(n\) 番目の数が第 \(n\) 項である(ex:第1項は \(-\frac{3}{2}\)、第2項は\(\frac{3}{2}\)、第3項は\(-\frac{4}{3}\)・・)。
したがって、部分和(初項から\(n\) 項までの和)を考えるときに、以下の2つの場合が出てくる。
\[S_{n}=-\frac{3}{2}+\frac{3}{2}-\frac{4}{3}+\frac{4}{3}\cdot\cdot\cdot-\frac{n+1}{n}+\frac{n+1}{n}-\frac{n+2}{n+1}+\frac{n+2}{n+1} (※n=2k)\cdot\cdot\cdot(★1)\]
のように、偶数 (\(2k\)) 番目まで取る場合と、
\[S_{n}=-\frac{3}{2}+\frac{3}{2}-\frac{4}{3}+\frac{4}{3}\cdot\cdot\cdot-\frac{n+1}{n}+\frac{n+1}{n}-\frac{n+2}{n+1} (※n=2k-1)\cdot\cdot\cdot(★2)\]
のように、奇数 (\(2k-1\)) 番目まで取る場合である。
よって、この手の問題では、部分和を複数の場合に分けて考える必要がある。(以下では、\(S_{2k}\) と \(S_{2k-1}\)とする)
そして、以下を使って判定する。
\([2]\lim_{k \to ∞} S_{2k}≠\lim_{k \to ∞} S_{2k-1} なら発散\)
今回の場合、(★1)より、\(S_{2k}=0\)である。よって、\(\lim_{k \to ∞} S_{2k}=0\)。
また、(★1)より、\(S_{2k}=S_{2k-1}+\frac{2k+2}{2k+1}\)である。
よって、\(S_{2k-1}=S_{2k}-\frac{2k+2}{2k+1}\)
よって、\(\lim_{k \to ∞} S_{2k-1}=\lim_{k \to ∞}(S_{2k}-\frac{2k+2}{2k+1})=0-1=-1\)。
以上より、\(\lim_{k \to ∞} S_{2k}≠\lim_{k \to ∞} S_{2k-1}\) であるから、発散。
ちなみに、無限等比級数では、項の順番を勝手に変えるのもだめ。それについて、次の問題で解説する。
3-3. 応用問題演習
例題:次の無限級数の収束、発散を調べ、収束すればその和を求めよ。
\[\frac{1}{2}-\frac{1}{3}+\frac{1}{2^2}-\frac{1}{3^2}+\frac{1}{2^3}-\frac{1}{3^3}\cdot\cdot\cdot\]
解説:
この場合、以下のように数列を並び替えて解答を進めていくのはNGである。
\[(\frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^3}+\cdot\cdot\cdot)-(\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{3^3}\cdot\cdot\cdot)\\=\sum_{n=1}^{∞} (\frac{1}{2})^{n}-\sum_{n=1}^{∞} (\frac{1}{3})^{n}\]
無限等比級数は、勝手に並びかえたり、( )でくくったりしてはいけない。
さきほどの3-2と同様に、部分和を複数の場合に分けて考え、以下のように調べる。
\([2]\lim_{n \to ∞} S_{2n}≠\lim_{n \to ∞} S_{2n-1} なら発散\)
\begin{eqnarray*}
S_{2n}&=&( \frac{1}{2}+\frac{1}{2^2}+\frac{1}{2^3}+\cdot\cdot\cdot+\frac{1}{2^{n}})-(\frac{1}{3}+\frac{1}{3^2}+\frac{1}{3^3}\cdot\cdot\cdot+\frac{1}{3^{n}})\\[5mm]&=& \sum_{k=1}^{n} (\frac{1}{2})^{k}-\sum_{k=1}^{n} (\frac{1}{3})^{k}\\[5mm]&=&\frac{\frac{1}{2}(1-(\frac{1}{2})^n)}{1-\frac{1}{2}}-\frac{\frac{1}{3}(1-(\frac{1}{3})^n)}{1-\frac{1}{3}}
\end{eqnarray*}
よって、
\begin{eqnarray*}
\lim_{n \to ∞} S_{2n}&=&\lim_{n \to ∞}\left\{\frac{\frac{1}{2}(1-(\frac{1}{2})^n)}{1-\frac{1}{2}}-\frac{\frac{1}{3}(1-(\frac{1}{3})^n)}{1-\frac{1}{3}}\right\}\\[5mm]&=&\frac{\frac{1}{2}}{1-\frac{1}{2}}-\frac{\frac{1}{3}}{1-\frac{1}{3}}\\[5mm]&=&\frac{1}{2}
\end{eqnarray*}
●今度は、\(S_{2n-1}\)について。
(★3)式は以下のように表すことができる。
\[S_{2n}=S_{2n-1}-\frac{1}{3^{n}}\]
よって、
\[\lim_{n \to ∞} S_{2n-1}=\lim_{n \to ∞} \left(S_{2n}+\frac{1}{3^{n}}\right)=\lim_{n \to ∞} S_{2n}=\frac{1}{2}\]
以上より\(\lim_{n \to ∞} S_{2n}=\lim_{n \to ∞} S_{2n-1}\)が成立するので、
無限等比級数は収束し、その和は\(\frac{1}{2}\)。