因数分解は、高校数学で一番最初につまずいた単元という人もいると思います。
とても基本的な分野ですが、それだけに高校数学でとても重要になる分野でもあります。
本記事では、因数分解の基本から応用問題、さらには複雑な因数分解を解くテクニックまでを分かりやすく解説しています。
この記事を使って、因数分解をしっかりとマスターしていきましょう。
因数分解について
因数分解とは?
そもそも因数分解とは、足し算・引き算の式を掛け算の式に変形することです。
実際に式で見てみましょう。
$$3x^{2}-7x+2$$
この式は\(x\)の二次式で、足し算・引き算の式になっていることがわかると思います。
そして、実際にこれを因数分解してみると、
$$\left( 3x-1\right) \left( x-2\right)$$
となります。
これは、カッコ同士の積の形になっており、カッコの外に\(+\)や\(-\)はありませんよね。
このように、値を変化させないように積の式に表し直すことを因数分解と呼びます。実際にこれを展開してみると、元の式に戻るのがわかりますね。
高校数学の中で最も基礎となる計算手段で、様々な問題に因数分解が登場しています。分からないまま放置してしまうと、つまずいてしまう原因となりますので、必ずおさえておくようにしましょう。
因数分解をする意味
因数分解を初めて勉強する受験生にとって、「因数分解ってなんのために覚えなきゃいけないの?」と思う人も多いはずです。
それは、「因数分解を使うことで、方程式の解を見つけ出すことができる」からです。
例えば、以下のような式を見てみましょう。
$$x^{2}-3x+2=0$$
この式をパッと見ただけだと、この方程式の解が何になるか分かりづらいと思います。
そこで、この式を因数分解してみます。
$$\left( x-1\right) \left( x-2\right) =0$$
式の右辺が\(0\)になっているので、左辺の \((x-1)\) または \((x-2)\) のどちらかが必ず\(0\)になります。
つまり
$$\left( x-1\right) =0 または \left( x-2\right) =0$$
$$よって x=1,\:2$$
ということがわかります。このように因数分解を使うことで、方程式の解を簡単に見つけ出すことが出来るようになります。
これはとても簡単な式ですが、単元が進むにつれて式が複雑になっていくので、因数分解が答えを導く重要な鍵となるわけです。
因数分解の公式
ここでは、代表的な因数分解の公式を挙げておきます。
この公式をそのまま覚えようとすると難しいので、色々な例題を解きながら頭に入れていきましょう。
3次式の公式は複雑でややこしいですが、公式を知っているだけで得点できるような問題も多いので、頑張って覚えていきましょう。
【2次式の公式】
$$x^{2}+\left( a+b\right) x+ab=\left( x+a\right) \left( x+b\right)$$
$$x^{2}+2ax+a^{2}=\left( x+a\right) ^{2}$$
$$x^{2}-2ax+a^{2}=\left( x-a\right) ^{2}$$
$$x^{2}-a^{2}=\left( x+a\right) \left( x-a\right)$$
【3次式の公式】
$$x^{3}+y^{3}=\left( x+y\right) \left(x^{2}-xy+y^{2}\right)$$
$$x^{3}-y^{3}=\left( x-y\right) \left(x^{2}+xy+y^{2}\right)$$
$$x^{3}+3x^{2}y+3xy^{2}+y^{3}=\left( x+y\right) ^{3}$$
$$x^{3}-3x^{2}y+3xy^{2}-y^{3}=\left( x-y\right) ^{3}$$
たすき掛け
素早く因数分解をするために必要なテクニックの1つが、「たすき掛け」です。
「たすき掛け」は、\(x^2\) の係数が\(1\)ではない2次式を因数分解する時に使います。
実際に例題を使って、やり方を見ていきましょう。
例題:\(3x^{2}-4x+1\) を因数分解せよ。
①まず、\(x^{2}\)の係数に注目します。
この例題では、\(x^{2}\)の係数は \(3\) なので、掛けて \(3\) となるような2つの整数を探します。
掛けて \(3\) となる整数の組み合わせは、「\(3\times1\)」 と 「\((-3)\times(-1)\)」 の2通りですね。
②次に、定数項に注目します。
ここでは \(1\) なので、掛けて \(1\) となるような2つの整数を探します。
掛けて \(1\) となるのは、「\(1\times1\)」 と「 \((-1)\times(-1)\)」 の2通りですね。
③そして、以下のよう手順でたすき掛けを行って、答えを探していきます。
(ⅰ)まず、図のように①と②で見つけた整数の組合せを、それぞれ1つ選んで、縦に書きます。
ここでは、①「\(3\times1\)」と ②「 \((-1)\times(-1)\)」 の組合せを使います。
(ⅱ)次に、図のように斜めに掛け算を行って、その解を右側に書きます。
※この斜めに掛け合わるところから、たすきを背中側で交差させている姿になぞらえて「たすき掛け」と呼びます。
(ⅲ)そして掛け算の解を足し合わせて、その答えが \(x\) の係数と一致すれば、たすき掛け成功です。
ここでは、\(3x^{2}-4x+1\)の \(x\) の係数 \(-4\) となっているので、成功です。
(ⅳ)最後に、横に並んでいる数字の組み合わせを括弧でくくってあげて完成です。
以上より、\(3x^{2}-4x+1\) を因数分解すると、
$$(3x-1)(x-1)$$
となります。
今回は、成功のパターンしか示していませんが、本来あれば他の組み合わせも試しながら答えを探していきます。
例えば、②の定数項 \(1\)となる組合せで「\(1\times1\)」 をつかった場合、
となります。これは、\(3x^{2}-4x+1\)の \(x\) の係数 \(-4\) と異なるため、失敗です。
組合せが多くなれば、計算回数も増えていくため、初めのうちはかなり時間がかかってしまうはずです。
しかし、繰り返し練習してたすき掛けに慣れれば、ある程度は暗算でできるようになり、短時間で因数分解ができるようになりますので、頑張ってマスターしましょう。
【発展】複数の記号が登場する因数分解
上記の公式とたすき掛けをマスターすれば、ほとんどの場面で因数分解が問題なくできるようになります。
しかし、発展的な内容として、簡単には解けない特殊な因数分解も出題されることがあります。
実際に例題を見てみましょう。
例題: \((a-b+c-1)(a-1)-bc\) を因数分解せよ。
このように、複数の記号が含まれている式は、どれか一つの記号について整理します。
例えば、cについて整理して、
$$\left\{ c\left( a-1\right) +\left( a-b-1\right) \left( a-1\right) \right\} -bc$$
$$=\left( ac-bc-c\right) +\left( a-b-1\right) \left( a-1\right) $$
$$=\left( a-b-1\right) c+\left( a-b-1\right) \left( a-1\right) $$
\(\left( a-b-1\right)\) で整理して、
$$=\left( a-b-1\right) \left( a+c-1\right)$$
となります。
複雑な因数分解を解くコツ
最低次数の文字について整理
複数の記号が出てくる式では、もっとも次数の低い文字について整理するのが原則です。
例題: \(x^{3}-\left( a+3\right) x^{2}+\left( 3a+2\right) x-2a\) を因数分解せよ。
この問題では、 \(x\) は3次、 \(a\) は1次なので、1次の \(a\) について整理し直します。
実際にやってみると、
$$-\left( x^{2}-3x+2\right) a+x^{3}-3x^{2}+2x$$
$$=\left( x^{2}-3x+2\right) \left( -a+x\right)$$
\(\left( x^{2}-3x+2\right)\) に \(x^{2}+\left( a+b\right) x+ab=\left( x+a\right) \left( x+b\right)\) の公式を使って、
$$=\left( x-1\right) \left( x-2\right) \left( x-a\right)$$
となり、因数分解がスムーズにできます。
複数の記号が出てきた場合には、難しく考えず、とりあえず文字数の少ない記号で整理してみよう。
式をかたまりとしてみる
式を1つのかたまりとしてみることで、シンプルな式に置き換えることが出来るときがあります。
例題: \(\left( x^{2}+2x+5\right) \left( x^{2}+2x-3\right) +7\) を因数分解せよ。
まず、この式の \(x^{2}+2x\) に注目します。
これを1つのかたまりと見て、 \((x^{2}+2x)=X\) と置いて整理してみると、
$$(X+5)(X-3)+7$$
$$=X^{2}+2X-8$$
\(x^{2}+\left( a+b\right) x+ab=\left( x+a\right) \left( x+b\right)\) の公式を使って、
$$=(X+4)(X-2)$$
\(X\) に \((x^{2}+2x)\) を代入して、
$$=\left( x^{2}+2x+4\right) \left( x^{2}+2x-2\right)$$
慣れないうちは、かたまりを \(X\) などの記号に置き換えておくと、ミスが少なくなります。
複雑な式の中に同じ形のかたまりが見えたら、 \(X\) などの記号に置き換えてみよう。
最後に展開して確認してみる
最後に展開してみて、因数分解が正しく行えているかどうか確認を行って下さい。
これは必ずしも必要ではありませんが、ミスを減らすためにも毎回確認を行うようにして下さい。
解けるかどうか怪しい難しい問題で考える時間を、確実に点が取れる問題をより確実にするための確認作業の時間に使うのも1つのテクニックです。
また、「因数分解の公式」や「たすき掛け」を使う場合、間違えないように紙に書きながら丁寧に解くよりも、頭の中で少し適当に計算をしてみて、これかなと思ったもので因数分解、その後に展開して確認を行うほうが意外と早く解けたりもします。
因数分解のあとは、一度展開してみて、答えが合ってるかどうかを必ず確認する。
まとめ
因数分解は、高校数学で必須のテクニックです。関数や整数など、数々の単元で登場するため、きちんと使いこなせるように繰り返し練習することが肝心です。
ただ、難易度の高い因数分解は、入試問題として作りにくく、大学受験では登場しにくい傾向にあります。
今回紹介した内容だけで十分に太刀打ちできるので、演習問題をこなしながら苦手意識を無くしていきましょう。