鉛直投げ上げ&投げ下げ公式
投げ下げ
鉛直投げ下げとは~公式の紹介~
ボールを地面に叩きつける場面を想像してほしい。鉛直下向きに、ある初速度で投げているような運動である。これを、鉛直投げ下げという。
以下はイメージ図である。(記号:初速度 \(v_{0}\) 、投げ下げてから時間 \(t\) 後の速度を \(v\) 、変位を\(y\)とする。下向きを正)
鉛直投げ下げにおいて、成立する公式は、以下の3つである。(\(g\):重力加速度)
\[v=v_{0}+gt\]\[y=v_{0}t+\frac{1}{2}gt^2\]\[v^2-v_{0}^2=2gy\]
この公式は、等加速度運動の公式を理解し覚えていれば、自分で導ける。それについて、次で解説する。
鉛直投げ下げ公式の解説~公式の丸暗記は必要ない~
等加速度運動の公式は、以下の3つである。(初速度 \(v_{0}\) 、運動開始から時間 \(t\) 後の速度を \(v\) 、加速度 \(a\) 、変位 \(x\) )
\[v=v_{0}+at\]
\[x=v_{0}t+\frac{1}{2}at^2\]
\[v^2-v_{0}^2=2ax\]
この3つを理解していれば、以下①~⑤のように鉛直投げ下げ公式を導ける。
①落下中は重力がはたらくため、物体の速度は変化していく。ものを落としたときに、速度が大きくなるのは、イメージしやすいだろう。
②速度が変化するという事は、加速度が働いている。このとき働く加速度は、重力加速度 \(g\) と言われる。
③つまり、以下の図のように、下向き(正方向)に加速度 \(g\) がはたらいている。よって、 \(g\) はプラス。
④最終的に、鉛直投げ下げとは、「初速度 \(v_{0}\) 、運動開始から時間 \(t\) 後の速度を \(v\)、働く加速度が \(g\)、変位\(y\)」の等加速度運動とみなせる。( ※物体の変位 \(x\)は、落下方向が縦であるので、分かりやすく \(y\) とする。理由は、数学の\(xy\) 平面を思い出すと、\(y\)は縦方向であるから)
⑤よって、これらを、等加速度運動の3つの公式へ代入する。\(v_{0}\)、\(t\)、\(v\)はそのままで、\(a=g\)、\(x=y\)とすれば、以下のように投げ下げ公式になる。
鉛直投げ上げとは
鉛直投げ上げ
ボールを上に投げる場面を想像してほしい。鉛直上向きに、ある初速度で投げ上げているような運動である。これを、鉛直投げ上げという。
以下はイメージ図である(記号:初速度 \(v_{0}\) 、投げ上げてから時間 \(t\) 後の速度を \(v\) 、変位を\(y\)とする。上向きを正)。
鉛直投げ上げにおいて、成立する公式は、以下の3つである。(\(g\):重力加速度)
\[v=v_{0}-gt\]\[y=v_{0}t-\frac{1}{2}gt^2\]\[v^2-v_{0}^2=-2gy\]
この公式は、投げ下げ同様、等加速度運動の公式を理解していれば、自分で導ける。それについて、次で解説する。
鉛直投げ上げ公式の解説その1~公式の丸暗記は必要ない~
投げ上げ公式は、投げ下げ同様、以下のように等加速度運動公式から導ける。
①投げ上がっている際も、物体には重力がはたらき、重力加速度 \(g\) が働く。
②つまり、以下の図のように、下向き(負方向)に加速度 \(g\) がはたらいている。
③よって、\(g\)はマイナス。つまり、鉛直投げ上げとは、「初速度 \(v_{0}\) 、運動開始から時間 \(t\) 後の速度を \(v\)、働く加速度が \(-g\)、変位\(y\)」の等加速度運動とみなせる、
④よって、これらを、等加速度運動の3つの公式へ代入する。\(v_{0}\)、\(t\)、\(v\)はそのままで、\(a=-g\)、\(x=y\)とすれば、以下のように投げ上げ公式になる。
公式の解説その2 ~公式内の”y”は変位を意味する~
たとえば、初速度20 m/sで鉛直投げ上げを行い、下図の★の位置に達するまでに3.0 sかかったとする。
このとき、投げ上げ公式の1つ \(y=v_{0}t-\frac{1}{2}gt^2\) に代入して求まる値\(y=20×3.0-\frac{1}{2}×9.8×3.0^2≒16 \)はどの部分を表すか考えてみよう。
鉛直投げ上げ公式の\(y\)以外にも、等加速度運動公式内の\(x\)や自由落下公式の\(y\)は、すべて「変位」を表す。
変位の定義は、
である。
運動前の位置は、この場合投げ上げを始めたところ(図中の※)であるので、\(y\)は下図赤の部分に対応する。
よくある勘違いは、「yが図中の青色の部分を表している」というもの。あくまで、yは変位であることを押さえておこう。(これは、そのほかの等加速度運動関連の公式でも同じである。)
鉛直投げ下げ例題演習(公式の基礎的な使い方)
解説:
※初学者向けに、非常に丁寧に書いてある。
step①:鉛直投げ下げ公式3つを書く。
\[(a)\ v=v_{0}+gt\]\[(b)\ y=v_{0}t+\frac{1}{2}gt^2\]\[(c)\ v^2-v_{0}^2=2gy\]
step②:問題文を読み、求めるものを把握し、公式中の記号に下線を引く。下線のない公式は無視する。
→この場合は、求めるものは速度であり、記号は \(v\)。3公式(a)~(c)中に下線を引く。すると、(b)は下線 \(v\) が登場しないので無視。
step③:問題文を読み、分かっているものを把握し、公式の記号に〇を付ける。
→この場合、初速度 \(v_{0}\) (=9.8 m/s)、加速度 \(g\)=9.8 m/s2)、変位 \(y\) (=14.7 m)が分かっている。よって、公式(a)(c)中の対応する記号に〇をする。
step②③を踏まえると、以下のようになる。
→下線以外がすべて〇の公式(c)を使えばよいことが分かる。
→(c)に、\(v_{0}\) = 9.8 、加速度 \(g\) = 9.8 、変位 \(y\) = 14.7 を代入。
\begin{eqnarray*}
v^2-(9.8)^2&=&2(9.8)(14.7)\\v^2&=&(9.8)^2+2(9.8)(14.7)\\v^2&=&(2\cdot4.9)^2+2(2\cdot4.9)(3\cdot4.9)\\v^2&=&4\cdot4.9^2+12\cdot4.9^2\\v^2&=&16\cdot4.9^2\\v&=&±\sqrt{16\cdot4.9^2}\end{eqnarray*}
\(v\)>0(下向きが正で、この物体は下向きに進んでいるから)より、
\begin{eqnarray*}
v&=&\sqrt{16\cdot4.9^2}\\v&=&4\cdot4.9\end{eqnarray*}
\(v\) = 19.6 m/s・・答え
※1)上の計算のように、ルートをはずす場合は、うまいこと2乗の形を作ることがポイント!重力加速度が絡む分野なら、9.8や4.9を軸に、上のように数字を変形するとうまくいくことが多い。)
※2)step①~④通りに何回か行い、慣れてくれば、step②③は飛び越えて、すぐに解けるようになる。
投げ上げ例題演習
基礎編(公式の基礎的な使い方)

step①:鉛直投げ上げ公式3つを書く。
\[(a)\ v=v_{0}-gt\]\[(b)\ y=v_{0}t-\frac{1}{2}gt^2\]\[(c)\ v^2-v_{0}^2=-2gy\]
公式(a)に、\(v_{0}= V\) 、\(v=-V\) 、\(t=T\) を代入。
\begin{eqnarray*}
-V&=&V-gT\\
-2V&=&-gT\\[3mm]
T&=&\frac{2V}{g}\cdot\cdot答え
\end{eqnarray*}
応用編その1(最高点関連の問題)
解説:
ものを投げ上げると、上がっているときに、徐々に速度が減る。そして、一瞬速度 = 0になり、落下してくる。つまり、
\[(c)\ v^2-v_{0}^2=-2gy\]
よって、\(v_{0}= V\) 、\(v=0\) 、\(y=h\) を代入
0^2-V^2&=&-2gh\\[3mm]
h&=&\frac{V^2}{2g}\cdot\cdot答え
\end{eqnarray*}
応用編その2(公式内の”y”にマイナス数字を代入する場合)


\begin{eqnarray*}
u^2-V^2&=&-2g(-h)\\
u^2&=&V^2+2gh\\
u&=&±\sqrt{V^2+2gh}\end{eqnarray*}
地面到達直前、ボールは鉛直下向きに進んでいるので、”マイナス”の速度である(鉛直上向きが正より)。よって、
\[u=-\sqrt{V^2+2gh}\cdot\cdot答え\]