1 関数の増減とは
以下の図のように、「関数(グラフ)が増加しているのか、減少しているのか」を判定する方法について、今から考える。
1-1 増減と傾きの関係~イメージ図付き~
まずは、坂道を想像して欲しい。
登り坂(→関数で言えば「増加」のイメージ)を進む場合、当然、1歩進めば登ることになる。つまり、傾きは”プラス”のイメージ。(当然といえば当然だが)。
一方、下り坂(→関数で言えば「減少」のイメージ)を進む場合、当然、1歩進めば下ることになる。つまり、傾きは”マイナス”のイメージ。
これを、数学的に見ると、以下のようになる。
つまり、以下のイメージである。
関数が減少↔傾き負
関数\(f(x)\)の傾きを数学的に厳密に評価するには、どうしたらよいか。それは、微分係数\(f’(x)\)を求めればよい。それについて、次のセクションで見る。
1-2 増減と微分の関係
微分係数\(f’(x)\)= 傾き、はすでに接線の単元で学んだ事項である。
つまり、
\(f’(x)>0\)→傾きが正、
\(f’(x)<0\)→傾きが負
である。
よって、
関数が減少 ↔ 傾き負 ↔ \(f’(x)<0\)
である。
つまり、\(f’(x)\)の正負を調べれば、関数の増減が分かる。
具体的に見ていかないと分かりづらいので、次のセクションでみていく。
1-3 例題
解説:
\(x>0\) の条件付きであるので、
\(x>0\) で\(f’(x)\)の正負を調べれば、増減が分かる。
\(f’(x)=2x+2\)
\(x>0\)のとき、\(2x>0\)で、\(2x+2>2\)である。
よって、\(x>0\)では、\(f’(x)>0\)。
ゆえに、\(x>0\)で\(f(x)\)は増加する。
※実際に\(x^2+2x\)のグラフを書けば、確かめることができる。
2 増減表作成の前に
本題の増減表作成の前に、作成の際に使う便利な考え方を紹介する。
2-1 微分係数の正負判定法 ~グラフの利用~
たとえば、さきほどの \(f’(x)=2x+2\) の正負を判定する際、グラフを利用して調べることもできる。以下のように、\(2x+2\)のグラフを書けば、\(x>0\)で\(f’(x)\)が正と分かる。
\(f’(x)\)が一次関数だと、便利さが分からないが、二次関数だと少し便利になる。
たとえば、\(f’(x)=x^2―5x+4=(x-1)(x-4)\)の正負を調べる場合。下図のようにグラフを書けば、楽に調べることができる。
グラフを書くと、\(f’(x)\)の正負が下図のように視覚的にすぐに分かる。
よって、
\(x<1,x>4\)では、\(f’(x)\)>0(→微分前の関数 \(f(x)\) は増加)。
\(1<x<4\)では、\(f’(x)<0\)(→微分前の関数 \(f(x)\) は減少)。
ちなみに、\(x=1、4\)では \(f’(x)=0\) であり、増加も減少もしない。
このグラフの活用は、増減表の作成の際によく使うので、覚えておこう。
2-2 例題
解説:まずは、\(f’(x)=-2x^2+3x-1\) のグラフを書く。
\(f’(x)=-2x^2+3x-1=-(2x-1)(x-1)\)より、グラフは以下のようになる。
\(x<\frac{1}{2},\ x>1\) では、\(f’(x)<0\)(→微分前の関数 \(f(x)\) は減少)。
\(x=\frac{1}{2},\ 1\) では、\(f’(x)=0\)。
3 増減表
いよいよ、本題の増減表の作成に入る。以下では、具体的な作成ステップを紹介し、例題の演習もする。
3-1増減表作成のステップ
\(f(x)=x^3-3x^2\) の増減表の作成を例に、解説する。
Step① \(f’(x)\) を求める。(上で見たように増減は\(f’(x)\)の符号と対応しているため)
→\(f’(x)=3x^2-6x\)
Step② \(f’(x)=3x^2-6x\)の符号を調べる。その際、2で見たようにグラフを書き、判定すると便利である。
→\(f’(x)=3x^2-6x=3x(x-2)\)より、グラフは以下のようになる。
よって、
\(0<x<2\) では、\(f’(x)<0\)(→関数\(f(x)\)は減少)。
\(x=0,\ 2\) では、\(f’(x)=0\)。
以上で増減表は完成した。ちなみに、表を参考に、\(f(x)=x^3-3x^2\) のグラフを書くと以下のようになる。
それではこれを踏まえて、2題例題を見る。
3-2 例題その1
解説:3-1で見たように、step①~④に沿って、解いていけばOK。
Step① \(f’(x)\)を求める。
→\(f’(x)=-3x^2+18\)
その際、2で見たようにグラフを書き、判定すると便利である。→ \(f’(x)=-3x^2+18=-3(x^2-6)=-3(x-\sqrt{6})(x+\sqrt{6})\)より、グラフは以下のようになる。
\(x<-\sqrt{6},\ x>\sqrt{6}\) では、\(f’(x)<0\)(→\(f(x)\)は減少)。
\(x=-\sqrt{6},\ \sqrt{6}\) では、\(f’(x)=0\)。
グラフを書くと、
3-3例題その2
3-2とは少し様子が違う増減表について、例題を通してみていく。
解説:
同じくstep①~④に沿って解き進めればよい。ここでは、詳細は割愛する。
\(f’(x)=-3x^2\) である。このグラフを書くと、以下のようになる。
すると、\(x=0\) では、\(f’(x)=0\) であるが、それ以外ではすべて負である。よって、増減表は以下のようになる。
よって、グラフは以下のようになる。
4 極値
4-1極値とは
さきほど3-2で作成したグラフをもう一度見てみる。
この中で、\(x=\sqrt{6}\) での \(y=12\sqrt{6}\)が極大値である。
極大値のイメージは、「狭い範囲で見ると、山の頂点になっているところ」である。もう少し固く言うと、
である。
こうなると、極小値が\(x=-\sqrt{6}\) での \(y=-12\sqrt{6}\)であると予想できる人もいるであろう。その通りである。
極小値のイメージは、「狭い範囲で見ると、谷になっているところ」である。もう少し固く言うと、
である。
4-2 極値の求め方
数2の範囲では、増減表(グラフ)を書く方法しかない。答案でも、グラフを書き、4-1で説明したように、極大・極小値を求めればよい。
また、有名な話だが、\(f’(x)=0\) を満たす \(x\) が、極値になるとは限らない。
3-3のようなグラフの場合、\(x=0\) で \(f’(x)=0\) だが、グラフを見れば明らかなように極値ではない。
このような場合もあるため、極値を求めるには、増減表(グラフ)を書く必要がある。
4-3例題
解説:
(答案に書く想定で以下に記す。「分かりやすい解説」としては、雑かもしれない。)
\(f’(x)=-3x^2+6x=-3x(x-2)\)である。
よって、増減表を書くと、以下のようになる。
そして、グラフを書くと、以下のようになる。
よって、極大値は、\(x=2\) のとき4。極小値は、\(x=0\) のとき0である。